あやめ池下池は平成14年(2002年)に近鉄が駐車場用地として池を埋め立てる計画を発表した際に、地元住民か
ら「歴史ある水辺と景観を残すように」と池の保全を求める声が大きくあがり、あやめ池下池埋め立て・駐車場建設問題対策委員会は、近鉄や奈良市にそれぞれに1万2千筆を超える署名を添えて、近鉄に計画撤回を要望し、奈良市に埋め立てを許可しないことなどを請願しました。奈良市は(当時:大川靖則市長)近鉄に地元住民との話し合いを強く指導されました。近鉄は住民と話し合い、住民の意見を尊重し、あやめ池遊園地閉園とともに埋め立て申請を取り下げました。あやめ池遊園地閉園時にも、跡地利用に関しては、自然や歴史的建造物の保全と活用を求める共同アピールを提出するなど、大川靖則元市長、鍵田忠兵衛前市長、藤原昭現市長の3代の市長に地元住民の意見を伝えた結果、十分協議するとの回答を得てきました。
そのあやめ池下池を奈良市が埋め立てる計画を作成することは、民意を無視した暴挙と言わざるを得ません。また、藤原昭市長の公約である「水と緑のネットワーク構想」にも著しく反します。
本計画案は市が設置した「あやめ池遊園地跡地利用検討会」の方向性を踏まえた計画としております。奈良市は検討会の市民代表として、近鉄があやめ下池を埋め立てて駐車場を建設すると計画した際に、住民に説明もしないで承認した当時の自治連合会長を選出しました。これは市民感覚からは理解できないことです。 検討会が出した【まちづくりのコンセプト・テーマ】は概ね市民の支持を得られるものですが、今回の変更案はあやめ池下池の埋め立てによる道路建設と駅前広場のみに言及した単なる道路建設計画であり、まちづくりの全体像が見えず、道路建設が持つ意味や都市計画道路のルートを変更する理由が理解できません。
地球温暖化、ヒートアイランド現象など地球が危機に瀕している今、私たちが快適に生活できるまちづくりが大切であるとともに、物言わぬ子どもや孫の世代に住みよい地球(持続可能な社会)を引き継ぐことも私たちの世代の責任となっております。特に、地球温暖化防止は緊急課題であり、奈良市においても公共交通の利用促進を重要課題として、パーク&ライドなどマイカーから自転車、公共交通の利用を促進しています。環境保全の視点で都市計画を見直すことが肝要です。
更に、少子高齢化社会の時代、子どもや老人を、ハンディを持った人を優先した、人に優しいまちづくり、歩く人に優しい新しいまちづくりが望まれています。
そして、奈良市は多大の借金をしていることを忘れてはなりません。
以上を前提に意見を述べます。
●池の効用をいかそう。
池はヒートアイランド現象の緩和効果ができます。また、水源確保、近年頻発する都市型洪水の防止効果もあります。奈良盆地の水問題は、大雨時に一度に流さずに如何に水を溜めるかが大切で、学校の校庭などは、お金を使って水を溜める構造に整備してまで努力しています。また今後、地球温暖化が異常気象の問題があり、大雨をもたらす危険が多くなります。これらの条件を考慮すれば、溜池を埋めてはいけないと思います。
調整池によって治水できるとの説明ですが池の整備に経費が発生し、更に下流域の河川に関しても見合った整備が必要となりここでも余分な経費が必要となります。
更に、防火用水としての効用もあります。(阪神淡路の地震の際、水がなくて火災を防ぐことができなかった。)
●道路整備の費用対効果が疑問です。
今回、整備する区間に続く東西の道路の整備の見通しがなく、また、奈良市の説明では一切支出に関する資料や説明がなく、逼迫している市財政を考えると賛成しかねます。
現在の道路を拡幅改良工事で整備するという提案、橋による整備の提案など多種多様な意見が出されております。それぞれの案には長所短所がありますが、比較検討が充分なされていないことは3会場で開催された説明会で議論が噴出したことで明らかです。
また、3会場での議論の記録も公表されておらず市民の意見がどのように検討、反映されたのか不明です。
ついては、市民との協働を大切にする藤原市長の施策を尊重し、経費も明確にした比較検討資料を作成して慎重に検討することを提案します。
● 駅前広場も駅構造との関連が未検討。
駅前広場を駅正面に配置する必要がなく、ピットイン形式、こんなに大きいロータリーは必要ないなどの提案があるとおり、これに関しても道路との関連のみの説明だけで広場の他の役割について言及されておりません。
また、駅前広場は駅と道路を結ぶ交通結節性は駅の構造と道路の構造と不可分で、駅構造、道路構造によって大きく変化するものです。しかしながら、今回に関しては問題となっている駅構造に関しては一言も触れられておらず、総合的な判断ができない状態ですので賛成できません。将来平城学園前線が完成した時点での駅構造、道路構造を含めた、あやめ池地区に会った新しい交通システムの全体像、青写真を明確にして、総合的に慎重に判断することを提案します。
●自然の価値を見直し、いかしましょう。
道路ができれば幸せになるかという疑問が、最近の奈良に起こる殺人、自殺、不祥事などの事件によってその疑問がますます大きくなります。
今、破壊した自然を取り戻すための工事が始まっている地域があります。また、道路建設などの公共事業は人間だけの都合を考えるのではなく、そこに棲む動植物の命を充分考慮することは常識であります。今回の検討には動植物の専門家の参加がなく、生態系への検討は漏れていると言わざるを得ません。
あやめ下池の身近な自然や命は私たちを癒し、子供たちに命の大切さを教えてくれます。
以上の通りは自然保護、財政、治水利水の観点から充分な検討ができていない今回の計画道路の変更(案)には反対です。
市民の意見を取り入れることやあらゆる角度から検討した再提案を期待します。
そのための慎重な検討と情報を公開し、市民と協働のよりよいまちづくりを希望します。
添付:読売新聞記事、日経ビジネス記事、あやめ下池風景写真。